『ウォーキング・デッド』はシーズン3からが本番(ネタバレ感想)

タイトルそのままだが、シーズン2まで「どこがそんなに面白いんだってばよ?」と世の皆さんに訊きたくなるウォーキングデッドがシーズン3でようやく化けはじめた。ああ、これだったら普通に面白いって言える。長い助走が終わってようやくテイクオフした感じ。でもさ、エンジンかかるの遅すぎ。

ガバナーのシーズン

シーズン3が前シーズンまでよりも格段におもしろくなったのと思うのは、ひとえに総督(ガバナー)のおかげだろう。ガバナーという人間側の敵の登場によって話全体に緊張感が出てきた。拉致された時にマギーが言う「人間の恐ろしさを忘れてた」という台詞が印象的だ。ウォーカーより人間の方が恐い。それをガバナーはリックたちだけでなく私たちにも見せつけてくれる。

眼帯をつけるようになる中盤以降は、それまであった理性的な部分も右目と一緒になくなってしまったかのような鬼畜っぷりで、メルルの指を噛み切るわ(マジかよ?!って思ったの私だけ?)、自分に従わない仲間にキレて皆殺しにしちゃうわで、もう人間というより死神に近い感じ。

結局このシーズン3ではガバナーとの決着はつかないが、今後どんなかたちでリックたちに絡んでくるのかシーズン4が楽しみだ。

メルルの再登場と退場

刑務所に移ってからはハーシェルに聖書を諳んじてみせて「ウッドベリーには図書館があった。それだけが惜しい」とか言い出したり、唐突にクレバーな面をみせるメルル。ここ、「あんた、そんなキャラクターじゃなかったじゃん!」とツッコミたくなるところだが、ガバナーに拾われて汚れ仕事をこなしてる内に、メルルもメルルなりにこの世界に対する向き合い方を探して決めていったんだろうことをうかがわせる印象的なシーンでもある。

そして最終盤の第15話、メルルはこの世界になってから16人殺したらしいが、「ガバナーと出会う前は?」というミショーンの問いかけに「ひとりも殺しちゃいない」と朴訥と返すメルル。あんまり好きなキャラクターじゃなかったけど、ここにきて急に愛おしく感じてしまった。

その後、待ち受けるガバナーたちに一人で立ち向かうのだけど、ガバナーの凶弾に倒れてウォーカーへと転化。それを追いかけてきた最愛の弟・ダリルさんが見つけて…という、この後のシーズンファイナルよりも衝撃の結末。最終的にダリルさんが泣き叫びながらとどめを刺すのだけど、シーズン3はあまり見せ場のなかったダリルさんのシーズン通して最初で最後の見せ場がこれとはね…。製作陣もガバナー並みに鬼よね…。

メルルでもうひとつ。メルルが最後の方でキャロルに「遅咲きだな」っていうところがなんか妙によかった。あんまり気にしてなかったけど、キャロルって本当に遅咲きだよね。あの暴力夫に虐げられていたキャロルが今では帝王切開の練習にウォーカーの腹を開いちゃうんだから。もしかしたらこれまでのシーズンで一番化けたのってキャロルかもしれない。それを「遅咲き」の一言で表現するメルル。こういう台詞をサラッと言えるキャラクターは貴重だったのに残念だ。

リックの再生とこれから

シーズン3はガバナーのシーズンだとはじめに書いたが、その対比として主人公・リックの再生が上手く描かれていたと思う。

思えばシーズン2のラストシーンは、リックによる事実上の独裁宣言だった。しかしシーズン3のラストでリックは仲間たちに自分が間違っていたことを謝る。自分は仲間があってこそ今ここにいるということに気づくのだ。

このようにリックはシーズンを通して絶望の底から這い上がり、本来の、いや本来以上の自分に到達し、自分を超えた。もうリックのウィークポイントは息子のカールぐらいだろう。ただ、そのカールまわりでこれから一波乱ありそうな雰囲気を醸し出している。しばらくはリックが苦しむ展開は見たくない気もするが、どうやらそうもいきそうにない感じなので固唾を呑んで見守りたい。