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それぞれの成長と掛け算 – 『ウォーキング・デッド』シーズン4感想

『ブレイキング・バッド』を全部観終わってからすぐに観たのだけど、なんだかんだで安定のおもしろさだなあと感心した。『ブレイキング・バッド』は全体的にわりとまったりな感じだったけど、『ウォーキング・デッド』は常に生きるか死ぬかの戦いなので、やっぱり緊張感があっていい。

シーズン3はガバナーという強力な個性が話を動かすワンマンなシーズンだったけど、シーズン4はいつものメンバーの人間性を少しずつ掘り下げた、いわば熟成のシーズンだったと思う。個人的にはキャロルの掘り下げ方がシーズンMVPをあげたいくらいよかった。シーズン3の感想にもちらっと書いたけど、もう化け切った感のあったキャロルがシーズン4で更に深みを増してきた。

逆に、あれだけ前シーズンで魅せてくれたガバナーの描かれ方があんまりパッとしなくて残念だった。ちょっと煮詰まった感もあったリックたちの刑務所生活を次のステージへと導くための再登板だったのだとしても、もう少しなかったのかな〜って。「ブライアン」が「ガバナー」に戻る展開も、あまりにも唐突すぎて…。じゃあ、なんで「ブライアン」やってたんだよと。

成長と掛け算

こんな感じで、中盤までなんかパラパラとした印象のシーズン4だったけど、ガバナーとの最期の決戦以降の刑務所が崩壊してからの展開が素晴らしいと思った。最初はここでまたバラすのか〜と思ったが、はじめに書いた通り、それはキャラクターの人間性をもう一段掘り下げるために必要なプロセスだったということが最後までみるとよくわかる。そして、バラバラにしたからこその「終着駅(ターミナス)」であり、逆に次の舞台が「終着駅」だったからこそバラバラにできたと。うーん、うまい。

個々でいうと、リックとバイバイしたキャロルをここでタイリースにあてるとは、今思えば王道展開なんだけど、ちょっと予想できなかったなあ。今やグループで一番「割り切れている」キャロルと、一番「割り切れていない」タイリースが、幼い姉妹の悲しい物語をトリガーにしてそれぞれの一歩をみせる。キャロルの告白をタイリースが受け止めるシーンは、これまでの全シーズン通してみても一番グッときたかもしれない。

このように、一見ドタバタのなかで散り散りになったグループは、各々が足りないもの、あるいは余っているものを互いに渡したりもらったりするように計算されて分割されている。そして、それぞれが少しずつ成長して「終着駅」へ辿り着く。人間の成長って、こうやって自分の何かを渡したり相手の何かをもらったりする、そういう交じり合いのなかにしかないんだろうな。渡してばっかり、あるいはもらってばっかりの足し算や引き算ではなくて、たぶんそういう掛け算なんだと思う。