私たちの世界の美しさについて – 新海誠監督『言の葉の庭』感想

友達に誘われたので映画の日に観てきた。特別料金1,000円の映画を、わざわざ映画の日に行かなくても…とちょっと思ったが、こういうのは勢いとノリが大事なんで。

新海監督の作品を観るのはこれが初めて。ただ、以前から一度観てみたいと思っていたからちょうどいい機会だった。断片的な情報から「映像美が武器のマルチプレイヤー」という印象を持っていたが、観終わったあともその印象は変わらない。「美しい」をつくることに長けた作家だと思う。

上映時間46分の短い作品だが、不思議とそこまで短く感じなかったし、ちょうどいいと思った。こういう上映スタイル、もっと増えてくれないかな。新しい才能と出会う良いきっかけになると思う。

映像美に目がいきがちだが、個人的にはエンディングテーマの秦基博の「Rain」がとても素晴らしかった。元々は大江千里の曲とのことで、YouTubeで大江バージョンを聴いてみたけど、自分としては秦バージョンの方が好みだった。秦基博の声の良さがすごく活きていると思う。

同時上映の『だれかのまなざし』は、娘を持つ父親として、いつか自分にもこんな未来がくるのかな〜としみじみした。いつかうちにも父と娘のディスタンスがうまれるのかな〜とか、またそれも娘の成長だと自分も感じることができるのかな〜とか。

私たちの世界の美しさについて

前段で新海監督を「美しい」をつくることに長けた作家と書いたが、これはちょっと気を遣った表現で、本音をいえば「美しい」しか作れない人なのかなと思った。

満員の地下鉄も、午前中の授業も、夢をみつけらていれない同級生たちも、嫉妬で他人を貶める悪意も、本作の主人公にとっては退屈で凡庸な唾棄すべきものでしかない。だからサボり、殴り、線を引く。そして雨の日の東屋にだけ自分があるべき美しい世界があると思っている。

…う〜ん、ちょっとガキすぎはしないだろうか?もしこの作品が世の中的にウケていて、すぐれていると評価されているとするなら、私は正直首を傾げたくなる。

私たちは誰しもがもうちょっと深い含蓄をもって生きているはずだと思うのだ。少なくともこんなガキくさい一挙手一投足に揺さぶられるほど軽くはない。

美しいものは美しいところにある。だからつまらない場所に身を置くと、いつまでたっても美しくなれない。そんな主人公の価値観は、たぶん監督自身のそれでもあるような気がする。都会の真ん中にある新宿御苑を彼らの現実逃避の舞台として選ぶセンスが、まさにそれを示していると思う。

しかし、私たちの世界の美しさとは、そのように何かとの対比でしか語れないものなのだろうか。

思えば、雨の日は歩き方を忘れて地下鉄に乗れないとかいう冒頭のセリフからなんとなく予感はしていた。雨の日の地下鉄のじめっとした空間のなかにだって、もしかしたら心が揺れる美しい瞬間はあるかもしれないし、やっぱりないかもしれない。でもそれを探すこともしないで切り捨ててしまう人間に、はたして美しい靴を作る力や、私たちの世界の美しさを語る資格はあるのだろうか。