演技だけでは突き破れない壁 – 『世界でひとつのプレイブック』感想

別に前から気になっていたというわけじゃないのだけど、たまにはこういうハートウォーミング系(?)の映画でも観てみようかなということで鑑賞。一言でいうと「ジェニファー・ローレンスを観る映画」だった。ちなみにジェニファー・ローレンスはこの作品でアカデミーの最優秀主演女優賞を獲っている。実際それにふさわしい演技だったかどうかということは私には判断つかないのだが、目にとても不思議な魅力をたたえた“気になる”女優だと思う。これからも出演作を追いかけてみたくなった。

ただ、肝心の話の方がどうも薄っぺらいというか、深みが足りない。これといった見せ場らしい見せ場も特にないのに、あれよあれよとみんながハッピーエンドに向かっていく感じどうも鼻につく。だいたい、躁うつ病や精神疾患に苦しむ人たちが、こんな短時間で出口(らしきもの)を見出せるのだろうか?と疑問が頭をもたげる。

だからなのか、わりと誰にでも感情移入できそうなのにどうしてもできない。ようは作り物なのだ。もちろん映画なのだから作り物で当然なのだが、それをいかに本物らしくみせるかというのかも映画だと思う。そしてそれは演技の面だけではどうしてもカバーしきれないところがあるのだろう。たとえそれがアカデミー賞レベルの素晴らしいものだとしても。

思えばデビッド・O・ラッセル監督の前作『ザ・ファイター』もなんかこれに近い感想を抱いた気がするが、あれは実話ベースというところで救われていたのかもしれない。クリスチャン・ベールの演技はとても素晴らしいのに、そこまで胸に響ききらないこの感じ。演技だけでは感性の壁は突き破れない。