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数あるDAPのなかから私がAK240を買った理由・おすすめする理由
iriverのAstell&Kern AK240を購入してからもうすぐ3ヶ月が経とうとしている。ここらでレビューのひとつも書いてみたいのだが、実際に使ってみた使用レビューというよりは、なぜ数あるデジタルオーディオプレイヤー(以下DAP)のなかからAK240を選ぶに至ったのか、その理由を中心に書いてみたい。とはいえ、AK240に限った内容というわけではなく、今現在新しいDAPの購入を検討している方全般にとって何らかの参考材料になるのではないかと思うので、興味があればしばしの間、できれば最後までお付き合いいただけると幸いだ。
これまでの環境について
COWON J3の教訓
まずこのDAP探しの旅はかれこれ一昨年、2013年の12月まで遡る。愛用していたCOWON J3のイヤホンジャック部分の故障で片耳しか音が聞こえない状態になってしまったのだ。
実はこのJ3、購入時からあからさまな初期不良で、箱出し直後なのに「カタカタ…」と中から何かが外れてるっぽい音が鳴る代物だった。おいおい待てと。いま思い出しても苦々しい記憶がまざまざと蘇ってくるのだが、とにかくAmazonで買ったので購入店にすぐさま持ち込むというわけにもいかず、サポートに直接問い合わせして、なんだかんだで手もとに戻ってくるまでに2週間くらいかかったと思う。
さすがに戻ってきたものについては問題なかったが、この一件でネットで家電製品を買うことのリスクと、海外メーカー、特に噂には聞いていた中韓メーカーのクオリティーをまざまざと見せつけられたので、今回のDAP選びの際にもiriverはCOWONと同じ韓国メーカーということでいの一番に外していたのだが、結果的には買ってしまったので、いやはやまったく信念が足りない軟弱者だと自分でも思うのだが、しかし言い換えるなら中韓メーカーに対する不信感さえも乗り越えるほどの魅力がAK240にはあったということだろう。
ちなみにここだけはその時の教訓を活かそうと、ネットではなくリアル店舗で直接購入した。今のところ初期不良っぽい症状もなく快適に使えているので本当にホッとしている。
またまた壊れたJ3を直すべき?
そんなわけでJ3が不調になり、さてさて困ったわけである。まず最初に浮かんだのが、この愛機を改めて修理するという選択肢なわけだが、無償修理期間はとうに過ぎているのでもちろん有償修理となる。では、その費用はだいたいどれくらいかかるものなのかとネットで「COWON J3 修理」と検索したのだが、探しても探してもいやはや全然情報が出てこない。ならばいっそのことサポートに問い合わせてみるかと思ったがそれも面倒なので、ちょっと頭のなかで軽くそろばんを弾いてみた。
まず、J3のバッテリー交換だけでもだいたい5,000円くらいなので、ジャック部分の交換くらいとはいえ余裕で1万は越えてくる気がする。そして、せっかくサポートに送るならついでにバッテリーも交換したいから、合わせると最低でも1万5,000円はいくだろう。うーん、3万くらいで買ったものを半値で修理するというのもなんだか面白くない。だったらプラスαして新しいものを買った方がいいのでは?というわけで、新しいDAP購入を考えはじめたわけである(この時はまだこの買い替えが1年以上かかる旅だと思ってもみなかった…)。
NW-ZX1を聴いてみる
それがちょうどSONY NW-ZX1が発売された頃で、当時の私はというと、やっぱり「7万もするウォークマンとか本気かよ…」と思うひとりだった。視聴はしたものの高嶺の花、選択肢に入れることはできなかった。ただ、プロダクトとしての完成度は非常に高いものがあるように思えたものの、細かくみていけば、タッチから反応するまでの微妙なレスポンスの悪さや、音量レベルの雑さ(ボタンからの操作だとステップが妙に大きい)など、気になるところが多々あり、ここまで値段が張るのならぐうの音もでないくらい完璧なものを出して欲しいと思ったものだ。
そして肝心の音質の方も、素晴らしいとは感じたものの、実はその後視聴したAK120の方が感動もので、それはもう思わず「マジか…」と口にしてしまうほどのものだった(10万越えという価格も「マジか…」だったのだが)。そしたこの時の「SONYよりもAK」という印象が、その後登場するそれぞれの後継機であるNW-ZX2とAK240を比べる際に思い出すことになる。
iPhone(RADSONE)で様子見する
当初の「中韓メーカーはナシ」という大前提が、ZX1のイマイチ感とAK120の感動でグラグラ揺らいだ結果、「【中韓メーカーはナシ】はナシ」といきなり180°方向転換する羽目になり、とはいえ本命候補は不在のまま、ここから迷路に嵌っていくことになる。
そんなこんなで2013年の年末、「DAPは今、買い替え時にあらず!」という結論に個人的に至り、それとは別にその頃気になっていたWestoneのUM Pro30を購入した(詳しくはこちら)。そして、このUM Pro30をiPhoneに直挿しして使う日々がかれこれAK240を買うまで続くことになるのだが、とはいえ、iPhoneの標準搭載のミュージックアプリは音がスッカスカなので、もうちょっといい感じの音楽アプリはないかと探したところ「RADSONE」に行き着き、ずっと使っていた。
はじめはやっぱり物足りなさを感じたが、しばらく使っていると慣れはじめ、またiPhoneだけで完結するお手軽さもあり、これはこれで充分いいのではないかと満足していた。なのでDAP選びに関しては2014年の夏頃くらいから熱が冷めてしまい、まあいいのがあれば…くらいの気持ちになっていた。
いろいろな機種を視聴する
ただ、その間もポイントポイントで気になる機種は視聴していた。本命候補の筆頭としてずいぶん待ったし期待もしていたFiio X5はホイールのチャチさにひどくガッカリした。触った瞬間「ズコーッ!」と心のなかの何かがホイールと一緒にスベった。
まだディスコン前だったiBasso HDP-R10は、音は確かに良かったのだが、やはり「デカっ!重っ!」という印象がそれ以上に強烈で、高音質を外へ連れ出すのは容易なことでないなと思い知らされた。
同じくiBassoのDX90jは音、操作性、重さなどのバランスがとても良く、とてもいい機種だと思ったのだが、それでも結局買うまでに至らなかったのは「これは買い!」と思い切れるほどの「魔法」がなかったからだと思う。
「賢者の買い物」と「魔法」
少し脱線するが、何か買い物をする時に、そこに過度な検討時間や労力をかけてしまうと、普通にいいと思ったものを買うという「普通の買い物」が出来なくなってくることはないだろうか。
少なくとも私は今回に限らずそういった傾向がある。目指すのはその時代のベストバイ、つまり「賢者の買い物」であり、しかもタチの悪いことに必ずそうでなくてはならないっ!というプレッシャーがいつの間にか勝手にムクムクと肥大化して、最終的に何も買えなくなるのが、だいたい私のいつものパターンなのだ。
要は私がものすーーーーーーごく優柔不断な人間だっていうだけの話なのだが、ただ、それでもひとつ言い訳を言わせてもらえるなら、モノのなかにはやはり「魔法」を放つものがあると思うし、その「魔法」に魅せられて人は大枚をはたくのだと私は思う。逆にそこに「魔法」がないのなら、それは「普通の買い物」で、たぶん選ぶべき選択肢ではないとも思うのだ。
では、その「魔法」とは何なのか?これはとても説明が難しいが、あえていうなら「畏怖」や「罪悪感」あたりが近い気がしている。そう、傷つくくらいじゃなきゃ刻まれないし、たぶん超えられないのだ。
…うん、我ながら重い。改めて言葉にしてみると痛々しいほど重たくて自分が一番ビックリするのだが、じゃあ、はたして本当にこんな重たい気持ちで普段買い物しているのかと自問自答してみると…、うん、たぶんしている。もちろん全部が全部、こんな重たい買い物じゃないが、でも、ここぞという買い物は常にジャンプをしていると思う。「えいっ!やあっ!」と何かを飛び越えるかのように。
そんな助走をつけて飛ばなきゃいけないような買い物は、はっきり言って私が目指す「賢者の買い物」とはずいぶん程遠いところにあるように思える。「そんなのはただの衝動買いだよ(笑)」と笑われるかもしれない。でも突き詰めていくと、それは確かに衝動買いであるけど、ただの衝動買いではないのだ。
腐るほどレビューを読み漁り、もちろん実店舗に何度も足を運び、あーでもないこーでもないと逡巡を情けないくらい繰り返す。でも、これが結果的にすべて助走になる。そして、逆に助走を十二分に取ったからこそ、覚悟を決めて飛び出せる、だからこそみせられるジャンプってものがあると思うのだ。
こういった「助走のある衝動買い」こそが実は「賢者の買い物」なんじゃないかと、今回清水の舞台から飛び降りるような思いで買ったAK240を手にして、何か思い至ったような気がしている。
どんなポリシーでもって普段買い物をしているかなんて今まで深く考えたことなかったけれど、ここには自分の哲学がありありと現れていると思うし、それってこのブログのテーマそのものじゃないかとハッとする思いだ。
「もしかしてAK240買えちゃう?」編
ほんの少しのつもりだったのに、かなりがっつりと自分なりの買い物論を書いてしまったので、そろそろ本線に戻りたい。
さて、DX90jの後、めぼしい候補が見つからない時期が続き、次第にDAP熱は冷めていくことになる。その頃にはもうAK第二世代のAK100IIとAK120IIが発売されてはいたのだが、価格面からいってとても手が出せないと割り切り、視聴は一応していたものの、本気で欲しくなるとまずいのでサラッと程度で済ませていた。AK240も一緒にその時に。AK240を初めて手にした時は、うわ〜これが例のアレか〜と少し感動した。
その時の第一印象としては、この三つ(AK100II、AK120II、AK240)、実はそこまで差がない気がした。強いていうなら、もし買うならAK100IIだなと思った。
じゃあ「そんなお前がどうしてAK240を買うまでに至ったんだよ?」って話。というわけで、AK100IIすら分不相応と思っていた私が、そこからいきなり二段飛びをかますことになった経緯について書き連ねてみたい。
カスタムIEMを検討する
まず、昨年末に少しまとまったお金ができた。まあ、つまるところこれがすべてといえなくもない。そして、それを普通だったら懸案のDAP購入費用にあてるところなのだが、その頃はiPhone+RADSONEの環境にある程度満足していたので、DAPよりもイヤホンを、しかもかねてからの憧れだったカスタムIEMに手を出そうという考えに切り替わった。
あれだけDAPを探していたのに何をいまさら!とつっこまれそうだが、耳に近いところから良くしていくというのがポータブルオーディオの世界のセオリーらしく、実際DAPを買い替えるよりも、イヤホンを買い替えた方がお金をかけた分のはね返りはわかりやすいと私も思う。だったら、カスタムIEMにしたらどうなってしまうんだろう…と興味がわいたのだ。
で、いろいろ調べたのだが、そのうちに一度買えば一生モノだと思っていたカスタムIEMが、実はそんなことないと知った。おいおいマジかよ…って感じなのだが、これが本当にマジらしい。経年変化で耳の形が変わるのだという。ラジオで亀田誠治が「なので僕はイヤモニを毎年作っている」とハッキリ言っていたから間違いない。まあ、亀田誠治はプロミュージシャンだし、仕事道具というのもあるからそれだけ惜しみなく買い替えられるのかもしれないが、たとえそうだとしても「十数万するものが一生モノでない」というのは私にとって軽く衝撃だった。
それに加え、カスタムIEMには「賭け」みたいな部分が多分にある。まず、いくら試聴機を聴き込んでみたところで、実際の完成品が全く同じ音というわけではないというのがひとつ。とはいえ、試聴機と比べて印象が悪くなるというケースは少なさそうなのだが、ちょっと不安に感じてしまうところがある。
そして何より怖いのが、たとえ間違いないところでインプレッションを取ったとしても、その完成品が必ずしも耳にフィットするとは限らないということだ。もちろん作り手側もプロなわけだから、全然耳に合わないなんてことはまずないだろう。でも、左耳の方だけ若干ゆるく感じるとか、そういったことは往々にしてあるみたいで、そのためのリフィットサービスなのだが、ただそれだって思った通りに一発でバッチリ決まるという保証がないのも事実らしく、さすがにレアケースだとは思うのだが、何度もリフィットをする羽目になった人もいるみたいだ。
しかも、そのリフィットだって一回一回が今日明日で直って返ってくるというわけでもなく、数週間かかるものなのだ。完成するまで場合によっては数か月間待ち、直すのに数週間。それでもまだ満足いくものでなかったらまた数週間…。どんだけリスキーなんだよ!とツッコみたくなる。そして初期不良のCOWON J3を掴むような自分が、はたしてその賭けに一発で勝てるのか?って話なのだ。カスタムIEMは確かに魅力的なのだが、なんか自分には合ってないような気がしてきた。
最強ユニバーサル機を検討する
でも、やっぱりイヤホン欲しいなあ〜と思い、次に目をつけたのが高級ユニバーサル機だった。しかもSENNHEISER IE800やWestone W60のさらに上、NOBLE AUDIO Kaiser 10 universal(以下K10U)だ。
たぶんK10Uは現在販売されているイヤホンのなかでも最強のひとつだろう。値段的にはJH AUDIO Laylaの方がさらに上だが、さすがにあれは無理…っていうかおかしいでしょ?いやいやいや、K10Uだって十分おかしいレベルじゃないの?という声も聞こえてきそうだが、そう、おわかりの通りK10Uを検討しはじめているこのあたりから完全に金銭感覚が麻痺している。
しかしながらこのK10U、ふたつの大きな懸念がある。まず視聴ができないこと。以前はeイヤホンに試聴機があったらしいが、残念ながら今は撤去されている。さすがに約20万円もするものを音も聴かずに買うのは躊躇われるというものだが、みんなけっこう試聴しないで買っているっぽいんだよなあ〜。勇者すぎる。
そして最大の懸念事項は、現在市場にほとんど出回っていないということだ。予想を遥かに上回る注文をNoble側が捌ききれていないようで、2月くらいの時点で予約しても年内に手元に届くかどうか…といった情報も2ちゃんねるで見かけた。ユニバーサル版を待つよりもカスタム版を買った方が早いという異常事態なのだ。
試聴もできず、すぐ手元に届くというユニバーサルならではの旨みもない…。「ええい!ならばK10カスタムをwizard designじゃあーっ!」と一瞬だけヤケクソになりかけたが、さすがにビビってやめた。ということで、泣く泣くK10Uも選択肢から外れることになり、またまたふりだしに戻ってきたわけだ。
あれ?もしかしてAK240買えちゃう?
そんなこんなしているうちに、ある日ふと完全に忘れていたDAP方面からひとつの案が浮かんできた。「あれ?K10U買う気なら、もうちょい足せばAK240買えるんじゃね?」と。まったく、完全に金銭感覚がおかしくなっているからこそ聞こえてくる悪魔のささやきだ。まさか自分がAK240を買うなんてこと、想像もしていなかったので完全に盲点だった。
「そうだよ、そう!そもそもお前はDAPを探していたんだよ!なのに、なんでカスタムなんて考えてるんだよ!目を覚ませ!」というわけで、ここでようやく初心にかえるわけなのだが、この長い長い周り道のゴールとしても、AK240は何かふさわしいもののように思えたし、周り道をしたからこそ辿り着いた選択肢のような気がして。
AK240 vs AK第二世代
AK240が検討対象になるということは、それすなわち市場に出回っているほとんどのDAPが対象候補となるのだが、まずは手始めにAK240とAK第二世代(AK100IIとAK120II)の比較からしてみた。
以前ザックリと試聴した限りでは、この三つに値段ほど音質の差はないという感想を抱いたが、ではいざ購入対象として耳を凝らして試聴してみたところ…うーん、やはりその思いは正直いってそこまで変わらない。いずれもベースとなるのはAKシリーズらしい上品な音で、その味付けの仕方がそれぞれ若干異なる程度ではないだろうか。
とはいえ、やはりAK100IIとAK240を聴き比べると、そこには確かな差を感じることができる。逆に、AK120IIとAK240の音質差はほとんどないと思う。ただ、仮にAK240を買えるだけの予算があるのなら、そこをあえてAK120IIの方を選ぶ理由もないような気がする。
AK120IIとAK240の大きな違いは、ストレージの容量とDSDをネイティヴで再生できるかどうかのふたつしかない。ただ、ストレージの容量なんて後からなんとでもなる話なので、焦点としてはDSDネイティヴの一点に絞られるだろう。「DSD音源なんてまだまだラインナップは乏しいし、値段も高いし、ネイティヴ再生なんて全然必要ない。だからAK120IIで充分」というのが、まあ一般的な考え方なのもしれないが、ここは「コストパフォーマンスなんてクソくらえ!」な趣味の世界、「フラグシップ」という言葉にめっぽう弱い人たちの集う場所なのだ。
なので、両機の音質差を聴き分けられてAK120IIの方が断然好みだとか、AK240のデザインがどうしても受け付けられないとか、そういった何らかの特別な理由があってAK120IIを選ぶのなら話は別だが、そうでないというのなら、もうちょっと予算を捻出してAK240を選ぶ方が後悔がないと思う。もしAK240を買えるだけの予算があったのにも関わらずAK120IIを選んだとしても、後々「なぜあの時、もう少し出して240にいかなかったんだ?」と思わない保証はない。ただ、AK240を買ってしまえば後々「やっぱり120IIでよかったな」と思うことはきっとない。AK120IIとAK240では所有欲の満たされ方が違うと思うし、この「『これより上』を考えなくてもいい」という安息こそフラグシップ機を選ぶことの価値であり、そしてそれはこの手の買い物においてとっても重要なものでもある。
この通り、めっちゃ精神論なのだが、以上の理由でAK第二世代は候補から外れた。ちなみに、賛否両論あるAK240の独特なデザイン、私も最初は「??」だったのだが、いざ手に取ってみると思いのほか手にフィットすることに驚いた。人間工学とフラグシップ機にふさわしい独創性が高いところで溶け合った非常によく練られたデザインだと思う。ちなみにライカなどを手かげたデザイナーによるものだということ。それに対して、AK第二世代のデザインは一見シンプルで完成度が高いように見えるが、ありきたり過ぎてつまらなく思う部分もある。特にAK120IIは頭でっかちすぎて、液晶の位置が手に収まった際に下すぎるような気がした。その点、AK240は液晶が上なので上部のスリープボタンとの位置関係のバランスも良く操作しやすい。これもAK240を選んだ理由のひとつでもある。
AK240 vs PAW GOLD vs NW-ZX2
AKシリーズでの比較を終えて、やはりAK240だという確信を強めはしたのだが、それでもまだ買えないのは、AK240の更に上をいく超強気の価格設定でポータブルオーディオ界隈を騒然とさせた新星「Lotoo PAW GOLD」と、国産の雄(とはいえ実際はマレーシア製)である我らがウォークマン「SONY NW-ZX2」との比較がまだだからだ。ZX2は他の二つに比べると価格帯が全然違うのだが、それなのにこの三つはセットで「最強DAP決定戦」的に比較されることが多い。
というわけでここがいよいよ天王山。自分の目と耳と手でもって、どれがベストバイが見極めてみようじゃないか!ここまでも充分長々と書いてはきたが、実はここからが一番書きたかったところであり、またニーズもあるところだと思うので、あくまで個人的な意見とはなるが、余すところなく書いてみたい。
DAP選びの三つのポイント
まず最初に、私なりにDAP選びに関して三つのポイントがそもそもあった。
- 操作性=UIが使いやすいこと
- 音質=直挿しでも満足できること
- 重量=あまり重たすぎないこと
この三つを指標として、実際に手に取って試聴してみた結果、結論から言えばAK240だけがそのすべてを満たしているというのが私の見解だ。では、各ポイントからどうしてAK240なのかを解説していこう。
操作性について
まず最初は操作性について。AK240とZX2は液晶のタッチパネルによる操作がメインで、サブとして横に物理ボタンがついている。それに対してPAW GOLDはすべて物理ボタンでの操作となる。物理ボタンは慣れてしまえばポケットの中でも操作できたりしてとても便利だ。実際にPAW GOLDを触ってみたが、物理ボタンによる操作感は反応もサクサクでとても良いと思った。
ただ、私はわりとちょこちょこ選曲する派なので、いちいちボタンを押しての上下移動による選曲はとても面倒に感じた。タッチパネルでの操作に慣れ親しんでいる人は、このように直感的に操作できないことへの煩わしさを感じてしまうことだろう。また、PAW GOLDはリスト画面でアートワークがサムネイル表示されないので、これもまた直感的に選曲できない要因なのかなと思う。やはりすべての操作が物理ボタンオンリーというのは今の時代にそぐわないし、なかなか厳しいものを感じる。
ついでに言うと、AK240やZX2に比べてPAW GOLDは操作画面が一回り小さいし、解像度も明らかに劣る。特にAK240は高精細な有機ELなので、その差たるや、例えるならファミコンとプレイステーション3くらい違う。とはいえ、PAW GOLDのあのビットマップな感じは、それはそれでプロユースっぽい業務用チックな雰囲気を醸し出していると思うので、「何いってんの?そこがいいんじゃないか!」と言う方も案外多いのではないだろうか。かくいう自分も実はそのひとりだったりした。
なのになぜ最終的にAK240を選んだかというと、本来のコントロールパネルとしての役割でいえば、その情報を表示する画面は大きければ大きいほど見やすいし使いやすいというのが一般論であり、またDAP選びにおいてもそれが結論でもあると思ったからだ。わざわざ小さくて見づらい方を選ぶ必要はない。「いやいや、それでもやっぱりPAW GOLDが…」という人はPAW GOLDを選べばいいし、私のようにそうは思えない人は普通にAK240を選べばいい。
PAW GOLDの見た目部分でもうひとつ。多くの人が「これだから中華センスは…」と苦々しく思っているであろう例の菊紋(実際は太陽神アポロンをモチーフにしているらしい)のような金色のボタン。個人的に実物はそこまでダサく感じなかった。いや、むしろこの「やっちゃった感」が絶妙なアクセントになっていて、なければないで物足りなく感じるのではないだろうか。気になる方は是非とも実物を見てから判断してもらいたい。
続いて音量調節に関して。音量調節はAK240とPAW GOLDはダイヤル式のボリュームでの操作となる。PAW GOLDのボリュームはほどよい重みがあり、高級機らしいカチカチ感を感じることができるのだが、それに比べてAK240のボリュームのゆるいことゆるいこと…。回し心地が非常にお粗末極まりない。今ではもう慣れてしまったので特別不満に思うこともなくなったが、どうしてこんなに操作感を軽くしてしまったのか本当に謎で、数少ないAK240のいただけないところのひとつだ。
一方、ZX2は液晶画面でもサイドボタンでも音量調節が可能となっている。ZX2のサイドボタンはZX1に比べると全体的に大きくなり、特に音量のプラス・マイナスボタンに関しては「バカにしてるのか?」ってくらいデカいので、一見とても使いやすそうにみえる。しかし持ってみるとわかると思うが、ボタン周りが凹んでいるので妙に押しづらく、また押した時の感触も堅い。あと、ZX2自体がもともと大きめのDAPなので、手の小さい人がこのサイドボタンを使いこなすのはちょっと厳しそうだ。
そんな感じでこのサイドボタン、世間的にはおおむね好評らしいのだが、ホントかよ?と疑いたくなるのが私の本音。「デカくすれば使いやすいだろ?」って、そんな単純な話ではないですよ、ソニーさん。
ちなみに、ZX1の時に残念に思った「サイドボタンによる音量調節のステップ幅がデカい問題」は多少改善されていて、ZX1が30段階での音量調節だったのに対して、ZX2は倍の60段階となっている。それでもAKシリーズは152段階なので、60段階でもまだまだって話なのだが。
しかし逆に「そこまで細かく音量調節したいか?本当に152段階も必要なのか?」という声もあるかもしれない。このあたりはボリュームコントロールがボタンでカチカチ方式なのか、それともダイヤルでグルグル方式なのかと、その方式によって最適と思われるが値が異なるので、一概にどちらがいいのかの白黒つけるのが難しいところだとは思うのだが、それでも敢えて言わせてもらえるなら、音量は細かく選べるに越したことはないと私は思う。
最後にOSまわりについて。AK240はAndroidをベースとしたカスタマイズOSで、音楽再生に特化されている。逆にいえば、音楽以外のアプリが一切ない。これはAK240に限らずAK第二世代も同様である。特別良いとも思わないが、悪いところも見当たらない無難なUIで、Android感はあまり感じない。
それに対してZX2はAK240と同じくAndroidなのだが、こちらは別にカスタマイズされたわけでない普通のAndroid(バージョン4.2.2)なので、メールやブラウザなど、音楽再生と関係のないアプリがバッチリ入っていて、もちろんその分のストレージをちゃんと喰っている。とはいえ目くじらをたてるほどでもない微々たるものだろうが。ちなみにZX1もAndroid(バージョン4.1)で、そこから比べてもあまりUI周りの改善点はないように思う。
最強のウォークマンを作ると言っておきながら、どうしてOSにはこだわらないのか本当に疑問で、普及価格帯でのハイレゾ対応ウォークマンとして人気を博している同じくソニーのA10シリーズは独自OSなんだから、フラグシップたるZXシリーズも独自OSを載っけるくらいの気概が欲しいところだ。開発陣は「バージョンの古いAndroidを“敢えて”選んでいる」とか偉そうに言ってる場合ではないと思う。
そしてPAW GOLD。こちらは完全に独自のOSを使っている。特筆すべきはこのOSの軽さで、電源のオンオフが非常に早い。また操作の反応速度も良く、AK240もZX2もタッチから反応までほんの僅かだがタイムラグあるのに対して、PAW GOLDはない。さきほど物理ボタンのみでの操作をネックポイントとして挙げたのだが、このボタン反応の良さのおかげでありと言えばありレベルには仕上がっている。ちなみにPAW GOLDもAKシリーズ同様、音楽再生以外の機能は一切ない。DAPなので本来そんなのは当たり前の話なのだが念のため。
以上をまとめると、AK240が他のふたつに比べると総合的に一番操作性が優秀だと思う。UIもそつなくまとまっているし、わざわざカスタマイズしたAndroidを載っけているあたりにもireverなりのこだわりを伺える。逆に、繰り返しになるがソニーはもう少しできたんじゃないのかと訝しく思う。ZX2がZX1とほぼ同じUIというのは本当に残念でならない。元々ZX2自体が売れまくったZX1の二匹目のどじょうを狙った早すぎるマイナーチェンジモデルといった感じなので、次に控えているであろうZX3にはそのあたりの進化を期待したいところだ。
音質について
では次に、一番気になるところでもある音質について。でも実はここは好みの問題もあるので、あれこれ語るのは難しい。なので、これから書いていく内容はあくまでも私の主観で、せいぜい参考程度くらいにしておいてもらいたい。
とにかく、この価格帯のDAPを買うのであれば、実物を視聴しに何度も足を運ぶことを勧める。「百聞は一見にしかず」ということわざがあるが、DAPに限らずオーディオ全般はこの逆だと本当に思う。どれだけレビューを漁って読んでもしょせん他人の耳での話なので、そこはしっかりと自分の耳とその感性で選んでいただきたい。
まず、いずれも会社の看板を背負ったフラグシップ機なので音質はどれも申し分ない…といいたいところだが、やはりZX2がほかのふたつに比べると一段劣ると思う。
私が聴いたイメージを率直に言うと、ZX2とPAW GOLDは音の傾向が似ていて、AK240に比べると「狭くて力強い」。一方AK240は他のふたつに比べると「広くておとなしい」。このように音の傾向としては両極端で、よって一概にどちらが高音質かというのは答えようのない質問だと思う。
逆に音の傾向が近いZX2とPAW GOLDでは優劣がつけられ、PAW GOLDを聴いてしまうとZX2に物足りなさを感じてしまうことだろう。まあこれは価格が倍は違うから、そのあたりを考慮すれば致し方ないと思うので深く追求しない。
PAW GOLDの真に迫るような音は凄まじい。だが、AK240に比べるとコントラストが強いのか、鳴り方がややキツく感じるところもあった。また、プロユースを謳っているのに、音が思いの外あまりモニターモニターしていなく、リスニング感のあるものだった。
対して、AK240の特徴はその音場の広さだろう。特に縦方向への広がり方は他では感じることのできないものであり、それがまた変なサラウンド効果みたいな安っぽいものではなく、立体的で上品な空間なのだ。
あと、解像度でいったらPAW GOLDとAK240はどちらも申し分ないのだが、特にAK240は音の余韻というか、消え際がすごい。説明が難しいが、AK240の余韻は習字で例えるなら「はらい」のかすれ具合が聴こえるような感じなのだ。この辺りは宇多田ヒカルの『First Love』のハイハットでPAW GOLDとかなり聴き比べたが、AK240の他が印象的に響くように感じられた。
ただ、先に述べた通り、この両機の音の傾向はかなり極端なところにあるので、どちらが単純に上かと比較できるものでもなく、また聴く音源の傾向にも依る部分もあるとも思うので、最終的には好みの問題なのかなという結論だ。よって、それぞれの特性を比較して吟味した上で、より自分の望む方向に近いものを選べばいいのではないだろうか。
結局私はAK240を買ったが、その要因として音質以外の部分が大きく、単純にPAW GOLDよりAK240の方が音質が良いとは思っていない。音と傾向としてはどちらも好みのだし、もし油田を掘り当てたなら両方とも欲しいと思う。
重量について
最後に重量について。私の場合、家ではDAPを使わないので、使用場所としては完全にアウトドアがメインとなる。なので持ち運びを考えると軽いに越したことはないのだが、逆に軽ければいいっていうわけでもない。
それはなぜか。これはDAP選びの最後の方にだんだんわかってきたことなのだが、上位機になればなるほど、つまり音質が良いとされるものほど得てして重たいのだ。DAPの重さとはパワーであり、音質はそのパワーに依るところが大きいと思う。(※けっこう言ってることが無茶苦茶だが、ザックリとそう言える部分はあると思うので続ける。)
では、なぜパワーが音質に直結するかといえば、最終的な出力先であるイヤホンやヘッドホンの持つ力を最大限に引き出せるかどうかは、DAPのパワー次第だからだ。かなりいいお値段の高級ヘッドホンをiPhoneに繋いで鳴らしてみた時に「…ん?」と感じるアレはつまりこのことで、iPhoneがそのヘッドホンを鳴らし切るほどのパワーを持っていないからだといえる。
では、AK240とPAW GOLD、そしてZX2のそれぞれの重量はというと、下記の通りとなる。
- AK240=185g
- PAW GOLD=280g
- ZX2=235g
一見してわかる通り、AK240だけが100g台で最も軽い。缶コーヒーが185gなのでそれと同じと書くとわりとズッシリに感じるが、iPhone6 Plusが172gでわりかし近く、モバイル端末としての重さとしてはギリギリでアリな分類といえる。
そう考えると、AK240より約100gも重たいPAW GOLDがいかに重たいかわかると思う。PAW GOLDはサイズがAK240よりもパッと見では小さくコンパクトにみえるのだが、厚さがなかなかのものなので、手に持つと余計ズッシリとくる。「あれ?こんなに重いの?」というのが、おそらく多くの人が手に取った時に感じる率直な感想だろう。ちょっとポケットに入れて外出…というには、ポケットに穴が空きそうなレベルの重たさだ。
そしてZX2。これはもう見た目通りに重い。身も蓋もなく重いと思う。しかもこの重たさの要因がその異常に持つバッテリーの分のような気がするから何だか癪なのだ。ZX2は他のふたつに比べると約3倍は連続再生時間が長い。私もわりかし毎日充電は面倒だと思うタイプなので、それはまあ魅力的に思えなくもないのだが、「というわけで、デカくて重くなりました!」というのは、あまりにもナンセンスすぎやしないだろうか?
操作性のところでも言及したが、ZX2はポータブル用途としては少し大きすぎるような気がしている。Calyx MやAR-M2などもそうだが、ちょっと外で使うのは躊躇う大きさというか、「それ本当にポケットに入るの?」といった感じで、DAPはポケットに入ってナンボだと思う私としては、ちょっと選択肢に入ってこない。
重さの話に戻るが、AK240の185gというのは、この手の高級DAPとしては異例の軽さだったりする。逆にいえば、どれもこれも重たすぎるのだ。個人的には200gがひとつの壁かなと思っていて、200g以上だと外に持ち出す使い方としては厳しいものがある気がする。
その点AKシリーズはAK100からずっとポータブルという前提を決して崩さずに商品を展開し続けて、結果DAP界隈の一角を担うまでの存在になった。ZX1が売れたのも、あのサイズにまとめてきたからだというのが実のところ大きいだろう。このように多くの人は「ちょうどいい大きさ」を求めている。なのに「音いいです。でも大きいです。重いです。」という商品が一向になくならないのは本当に謎だ。
まあ、それでも中華DAPなら許せるのだ。あれはそういう特別枠だから。でも、そんな底の浅い場当たり的な商品を「こだわり」という聞こえのいい言葉でオブラートのように包んで平然とブッ込んでくるような真似をするソニーには率直に失望を感じるし、クラフトマンシップの欠片さえないように思う。元々大好きなソニーなのに、いや、大好きだからこそ今のソニーのやっていることの信念のなさみたいなものが本当に残念でならない。
最後は完全にソニーへの愚痴になってしまったが、まとめると「軽いDAPはパワー不足」「重たいDAPは持ち運びに不便」ということで、ならばあまり重たすぎないAK240が一番ポータブル用途としては向いているというのが私の見解となる。
結論は「総合力でAK240」
3つのポイントとなる「操作性」「音質」「重量」のすべてにおいて、AK240だけが自分のなかの基準をクリアしてくれた。逆に他のふたつは、まだまだツッコミどころがあるように思える。これほどの価格設定にもかかわらず、音質面というのならまだしも、それ以外の作り込みの部分でまだ不満に思われてもしかなたい要素が残っていること自体がそもそも謎だ。
AK240の魅力はその総合力、そつのなさと言えるだろう。ひとつひとつの要素がどれもが高いレベルでまとまっていて、特別不満を感じるところがない。唯一にして最大のネックはやはり価格。でも、逆にいえば価格だけなのだ。オタクの足元をみるような、あえて言わせてもらうがこの非常識な価格設定さえ許せるならば、間違いなく最高の満足感を与えてくれるだろう。
たぶん「こんな値段なんだから、そりゃ良いモノに決まっているだろうが!」と思われるかもしれないが、確かにそれはそうなのかもしれないが、でも、このくらいの値段を出さなくては何の不満のないモノが手に入らないのが今のDAP市場と言えると思う。残念なことに「音はいいけど、使い勝手が…」とか、「軽くて操作しやすいが、音はそこそこ…」みたいな、そんな製品ばかりなのだ。何を諦めるか、何を許すかという「落としどころ」としての選び方しかなく、何も諦めずにとことん理想を追求するとなると…選択肢としては非常に限られてくる。
ここで少し初心に立ち返ってみるが、そもそもスマートフォンで音楽を聴くのが主力のこの時代にあえてDAPを買うような奇特な人種である我々は、別にお金をかけてもいいから外でもちゃんとした音で音楽を聴きたいという願望があると思うのだ。であれば「何で妥協する?張ればいいだろ?上限まで。」という、ちょっとイケない囁き声があなたも聞こえないだろうか。もし聞こえているのなら、もう思い込んでジャンプ、翔ぶしかない。AK240はその着地点とするにはふさわしい製品だと思うし、総合力で最強のDAPだと確信している。
AK240を購入してみて
eイヤホンに時間をあけて都合三度試聴しに行った(ビビりすぎ)。そしてeイヤホンではない別の店で買った。もちろん新品。eイヤホンは量販店ならケース内にあるだろう高額商品も自由に試聴させてくれてとてもありがたい店だとは思うけど、でもやっぱり「買う店」とは思えない。
eイヤホンにはPAW GOLDもあるし、AK240の上位版であるAK240SSもある。もちろんどちらも気軽に視聴可能なので、このあたりと比較検討しての購入を考えている方は、たとえ遠方であっても最低一度は足を運ぶことをおすすめする。
ちなみにAK240SSとAK240の音の差は若干だが確かにあると思うし、私はAK240SSの方が好み。より澄んでいる気がする。ただしAK240SSは重量が275gもあり、PAW GOLDの280gと大差なく、ポータブルするのがしんどい重さなのでパス。これがせいぜい200g弱くらいで抑えてくれて、AK240との価格差がもう少し常識の範囲内であればAK240SSを選んだと思う。
AK240を購入してみて、まず率直なところでは、長いこと日常化していた価格.comと2ちゃんとTwitterと、そんなネットパトロールから解放されてホッとした。当分DAPのことを考えなくていいわ〜なんて思っていたら、先日AK380が発表されてちょっとだけガッカリ。いや、そろそろなんか仕掛けてくるだろうなとは思っていたにはいたのだが。
でもあれはなんて言うか「スーパーガンダム化」まで見据えてこそ価値があるような感じなので、もはや別ジャンルの空気感がある。とことんまでiriver様についていきますという信者仕様すぎるかなと。ただ、大きさは確かに大きくなったが、重量は218gということでPAW GOLDやAK240SSよりも控えめなところは好感が持てる。発売されたらちょっと聴いてみたい。
長い長いレビューもさすがにそろそろおしまいとしたいが、最後にあと少しだけ。よくポータブルオーディオ環境を整えていく順番としてDAPが先かイヤホンが先かという話があり、一般的にはイヤホンからこだわっていった方がコストパフォーマンスがわかりやすいと言われている。これは私もそう思っていて、極端な話、カスタムIEMとスマートフォンでも、デフォルトアプリではなく数百円くらい払ってミュージックアプリを使うようにすれば、ある程度の満足感は得られるような気がする。
ただし、果たしてそれで本当に満足なのか?っていう話でもあるのだ。カスタムIEMをスマートフォンに挿して満足できるような人が、そもそもカスタムIEMを買うだろうか。いやいや、そんなはずがない。せっかくのカスタムIEMなんだから、それを思う存分鳴らし切れるDAPが欲しくなるに決まっているわけで、近い将来にそれに見合ったDAPを買うことになるだろう。DAPとイヤホン、どちらか一方にこだわろうとしても、最終的にはどちらにもこだわることになってしまうと思う。
であればだ、DAPが先かイヤホンが先か、その答えとしては「どっちが先でもいい」が適切なのかもしれない。私は今回DAPが先になってしまったが、ここが終着点だなんて全然思っていなくて、むしろようやく下準備が終わり、ここからスタートくらいに思っている。このAK240でいろいろ視聴して、次のイヤホンを探すのがこれからとっても楽しみだ。とはいえ、今は手持ちの予算を大放出してしまった状態なのでおいそれと次は何かなんて考えられないが、また時期が来たら、K10Uのような高級ユニバーサル機やカスタムIEMを手にする夢をみたい。