鋼のまなざし – 『花の中学生応援団 泣いて笑った成長物語』感想

フジテレビで日曜の昼すぎに「ザ・ノンフィクション」というドキュメンタリー番組がやっていて、好きなのでわりとよく観る。きっと視聴率的にはあんまり芳しくないだろうこの時間帯に、こういうおもしろい番組をやっていること自体とても嘆かわしいことなのだが、それをここでやいの言っても仕方ないのでさらっと流す。

この「ザ・ノンフィクション」の名物企画のひとつに、中学生応援団の成長を追ったドキュメンタリーがある。過去二回にわたって放送されたのだが、特別追いかけていたわけでもないのに何かの巡り合わせか両方とも観ることができて、私はすっかりこの企画の大ファンになってしまった。

舞台は明治大学附属明治高校。中高一貫のこの学校には60年という長い歴史を持った応援団がある。そこに入部した中学生たちの汗と涙の奮闘記なのだが、彼らの真剣な姿を観ていると自然と込み上げてくるものがあって、さわやかに泣かされるのだ。

そして先日、これもまた巡り合わせなのか、偶然この企画が本になっていることを知り、すぐに探して飛びつくように読んだ。番組のディレクターさんが書いた本とのことだが、文章がとても読みやすく、夢中になって一日で読み切ってしまった。

本の方にはテレビではあまり取り上げられることのなかった家族の目線がかなり含まれていて、そこが読みどころのような感じに仕上がっている。本人たちが悔しい涙を流している時、それを心配しながら影で支えていた家族もまた涙していたんだと知ると、なんかこっちまで泣けてきた。

全部で5つのエピソードが収録されているが、どれもすごくいい話でほろほろ泣ける。特に最後の応援団OBの話は思い出すだけで泣けるほどの珠玉のエピソードだと思うので、少しでも気になったならぜひ読んでもらいたい。

自分の青春時代と重ねあわせて

気合とか根性が古臭いと言われるこの時代、まして他人から「ダサい」と思われることが何よりも嫌な思春期に、そういった精神論のど真ん中に若くして身を投じる彼らは、やっぱりちょっと変わっているのかもしれない。

私も学生時代に自分の好きなことに打ち込んだ。しかし、こういった応援団のように、何か自分が自分でなくなってしまうような大きな価値観のなかにダイブはしてこなかったと思う。

そもそもそういった出会いがなかったし、たとえ出会っていたとしても、そこに飛び込むだけの度胸はなかったかもしれないが、何よりも自分の道は自分で必ずゼロから見つけたいという意識がすごく強かったように思う。

自分で見つけたものでなければ、それを心から愛せないと思っていたし、でないと自分が自分として生きている意味さえ見失うくらいのことはたぶん考えていた。振り返ってみれば、私も私なりに多感で青い時代を過ごしていた。

だから彼らのように十代の頃、自分が溶けてしまいそうな大きなものと出会い、それを自分の道としてきた人たちのことを、心のどこかで理解したくないし、できない自分がいる。たとえそれが私のちっぽけなプライドだとしてもだ。

心を貫く鋼のまなざし

それでも私が今こうして、彼らの成長の記録を観たり読んだりして心を震わせるのは、たぶんそんな私のちっぽけなプライドを忘れさせるくらい、彼らが応援に打ち込む時の真剣なまなざしが心を貫くからなんだろう。

まだ幼さや少年の面影が残る彼らの顔が、厳しい練習や大きくて揺るぎない価値観と出会うなかで、頼もしい青年のそれへと変わっていく。それはまるで鍛え抜かれて硬くなっていく刀剣のような、見る者の心を奪う鋭い輝きを帯びていて、そこには有無を言わせぬ絶対的な何かがある。

なので、本書のなかで紹介されている写真はけっこう見どころだったりする。数はそんなに多くないけれど、彼らの成長を驚くほど感じることができるし、まるで自分が親にでもなったかのように嬉しく感じてしまう。

そう思うと、やはりこれは本よりテレビ向きの題材であるのかもしれない。とはいえ、本は本で切り口を変えてきているので読む価値はあると思うし、本を読んで気になった人はYouTubeか何かで、ぜひ映像を探して観てもらいたい。彼らのまなざしを鋼のように鍛え上げたもの、そしてその鋼のまなざしの先にあるものは、きっと私たちが忘れてしまったけど忘れたくない、そんな永久不変の大切なものだと思うから。