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Gシリーズに流れる静謐な時間 – 森博嗣『ジグβは神ですか』感想

森博嗣のGシリーズ最新刊『ジグβは神ですか』の感想を一言でいうと、せつない。Gシリーズの読後感ってこんなにせつなかったっけ?思い出そうとしても、前作『目薬αで消毒します』を読んだのは4年以上前のこと。覚えていることの方が少ない。

そう、今作は前作から4年間というけっこうな時間が空いた。森博嗣のシリーズでこんなに刊行ペースが空くことって今までなかったと思う。そのせいか本作は作品内でも同じように時間が経っていて、加部谷恵美が大学を卒業して就職していたりする。登場人物たちもそれぞれの時間を生きていたようだ。

交わりそうで交わらないリアル

S&Mシリーズからのファンとしては、いつかGシリーズで真賀田四季と犀川創平の再戦がみたいと思っていたし、保呂草潤平と瀬在丸紅子の再会がみていみたいと思っていた。でも、本作を読んでいたらだんだんそんなことはどうでもいいと思うようになった。犀川も西之園萌絵も「真賀田四季にはもう関わらない方がいい」というスタンスでいるし、ワケありの保呂草は自ら積極的に彼らと関わろうとしない。でもそれがリアルだと思うし、登場人物たちが人格をもって生きていることの証しであると思う。

だからむやみに再戦や再会を望むことは、ただの読み手のわがままな気がしてきた。交わりそうで交わらない感じこそがリアルだと思うし、このリアルがGシリーズの醍醐味だとも今は思う。読み方が変わったのは、この4年間で培った成長なのかもしれない。どうやら私も彼らと同じだけ時間を積み重ねて生きていたようだ。

天才たちへの信仰と憧憬

今回、水野涼子(赤柳初朗)はすごく久しぶりに瀬在丸紅子と再会したということだったが、この再会における水野のときめきがとてもよくわかった。別れ際に相手が見えなくなるまで見送るあの感じ。そばにいたいのにいられない。加部谷にとっての海月及介もこれと同じだろう。顔をあわせるだけで、声が聞けるだけで満足だと思える。そんな関係を時に人は「信仰」と呼ぶのかものしれないが、でもそれって単純に「憧れ」だろう?また4年も空くとは思っていないが、憧れの天才たちとの再会を楽しみにして次刊を待つことにしよう。