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『弱虫ペダル』インターハイ編完結によせて

以前「御堂筋くんがリタイアしたから、私のなかでこのマンガはもう終わった」なんて書いてみたものの、一応最後までは見届けるつもりで読んでいた『弱虫ペダル』が第27巻でついにインターハイ編に終止符を打った。でもどうやらまだ続くらしい。ビックリだ。

終わらない。終われない。

実はインターハイが終わっても連載続行の予感はあった。アニメ化の話がインターハイ三日目の最終盤なのにもかかわらず発表された時、これインターハイが終わったあとも普通に続きそうだな〜なんて思っていたから。

それでも巻数や残される手駒のポテンシャルからいって、インターハイ編ですべてを描き切って終わらせるのがベストだと思っていたし、そもそもそういうものだろうとなぜか信じ切っていた。

で、いざ単行本でゴール後の数話を読んでみると、なんか早々にニューマシンなんかも登場しちゃったりして、とりあえずまだまだやる気マンマンだということがよくわかった。

いろいろ思うところはあるが、やっぱりまずはガッカリした。誰がどうみても終わるべきタイミングなのに、それでもちゃんと終われないのは連載マンガとしてとても悲しく不幸なことだと思う。

誰のためのメディアミックスか

正直いってインターハイ編の三日目あたりからの息切れ感は酷いものだった。絵はどんどん雑になっていくし、肝心のバトルの方もマンネリ化が否めない。展開もすべて場当たり的でプロットが感じられず、ただの巻数稼ぎとしか思えなかった。

このように作者のポテンシャルやその限界については、この数年間でまざまざと読者の前に露呈されたと思う。それでも編集部にしてみたら大切に育ててきた金看板なのだろう。おもしろくなくなったくらいでは打ち切るわけにはいかないらしい。

こんなの今に始まったことでもないけれど、マンガ業界にとってアニメ化やメディアミックスが弾き出す数字は決して無視できるものではない。年々苦戦を強いられている出版業界としては、そこに砂漠のオアシスへとつながる生き残りをかけた活路をみているに違いない。

でも、そうやって作られたアニメはいったい誰がみるのか?誰が初回特典付きBDボックスを買うのか?それはファンじゃないのか?なのになぜファンをガッカリさせるのか?

すべてのメディアミックスが間違いだとは言わないが、今回の『弱虫ペダル』のように露骨なまでに金儲けが透けてみえる延命措置のようなやり方は、ちょっと疑問符を投げかけずにはいられない。おもしろくなくなったくらいでは読むのをやめなかった、いつかまたおもしろくなると信じて読んできたひとりのファンとしては裏切られた気分だ。

「部活マンガ」の難しさ

作者や編集部への憤りを別にして、今回のことであらためて思ったのは、『弱虫ペダル』に限らずこういった部活動をベースにしたマンガは、長期連載としてやるにはそもそも難しいのかもしれないということだ。

連載当初の勢いづけとして、読者の注意をひく濃い曲者キャラクターが初期段階で登場するのはよくあるパターンだが、その役割を部活マンガの場合は上級生に割り当てられることが多い。『弱虫ペダル』の場合それは三年生、特に巻島あたりになると思う。

で、そのキャラクターは主人公の指南役として、時に精神的な支えとしてがっちりと物語の屋台骨になっていくのだが、部活マンガの場合は引退という明確なタイムリミットがあるのが難点だ。

それは連載が長期化するにつれてじわじわと大きくなる爆弾みたいなもので、それが今回のように爆発したら、あとに残るのは「他のキャラクターでは役不足」という不毛の大地だったりする。

でもこれはキャラクターマンガ全般にいえる宿命みたいなものだ。だから、それをいかにストーリーやプロットでカバーしていくのかが、きっとマンガを長期連載していくうえで必ず念頭に置かねばならない課題なのだと思う。なのに『弱虫ペダル』は部活マンガにも関わらず、その点があまりにもおざなりだったように思う。

これからの展開をちょっと妄想

まず、セオリー的には坂道はどこかで一度コテンパンに負ける必要があると思う。初心者の坂道はまだアスリートとしての壁にぶち当たっていない。この点が小野田坂道というキャラクターがいまいち厚くなっていかない原因かなと思う。一度ダークサイドにでも堕ちて、そこから這い上がってくれば、主人公としての風格も少しは出てくるだろう。

では、坂道を奈落の底に突き堕とすのは誰なのか。ちなみに坂道は現時点で最強の高校生なので(競技自転車をはじめて数ヶ月のなのに!)、生半可な相手では勝てない。となると、先のインターハイでコテンパンに負けた御堂筋くんがニュー御堂筋くんになって再登場を願うという想像がふくらむし、実際にそういうフラグが27巻の中で立っていた。御堂筋くんファンとしては、とっても気になるフラグだ。

しかし、個人的には、御堂筋くんと坂道の初めてのガチンコバトルは、坂道が負けて這い上がった後の方がよりドラマチックかなと思う。そしてそれはきっと『弱虫ペダル』の集大成的なバトルになると思うし、先般書いた通り自転車マンガを超えた何かがそこには生まれそうな気がしている。

さよならするにはちょうどいい。だけど…

とまあ、妄想は考えれば考えるほど広がるが、ではこれを実際に全部やるとなるとインターハイ編クラスの山をあとふたつは越えないとならない。となると、単行本はあと何巻分必要になるだろう?でも、もしその何かをみせてくれるというなら、最後の最後まで追いかけてみる価値はあるだろう。

ただ、正直今はそこまでの気持ちになれない。散々書いてきた通り、マンガとしてのデキはかなり悪くなってきているので、見限るとするなら今はこれ以上ないタイミングなのだと思う。

だが、坂道がゴールした瞬間に両腕を突き立ててガッツポーズをとるシーンに図らずも胸が熱くなったこともまた事実だったりする。だからなんだかんだ言って期待しているのだろうし、期待しているからこそこうやって文句も妄想もあれこれ溢れ出てくるのだろう。

うーん、やっぱり今ここで感情に任せてバッサリとはいかず、しばらくは単行本を買うのを止めて様子見程度に留めておこうかな?そしてまたおもしろくなりそうになってきたら、あらためて追いかけてみようかな?うーん、わからない。ただひとつ言えるのは、どうやら私も相当な甘ちゃんらしい。こんなに裏切られてもまだ信じようとしているのだから、女々しくて辛いよ。