名匠が描く燻し銀のリアルファイト – 谷口ジロー版『餓狼伝』感想

『餓狼伝』はもともと夢枕獏の格闘小説で、バキシリーズで有名な板垣恵介が作画する漫画版が出ていることは知っていたが、板垣より以前に谷口ジローが漫画化していることは知らなかった。きっかけは夢枕獏の山岳小説『神々の山嶺』がすごく面白いと聞いてAmazonで検索している時。板垣の『餓狼伝』もいつか読んでみたいと思っているが、とりあえずこちらは一巻完結なのでもし期待はずれでも後腐れがないかなという考えも手伝って読んでみた。

この漫画の見所は、やはりリアルな格闘シーンだろう。谷口ジローの描く格闘シーンはコマ割りがオーソドックスだと思うし、決して派手さを感じるものではないが、とてもリアルだ。ここでいうリアルとは絵が綺麗だとかいうことではなく、攻め手と受け手の一連の攻防を端折ったり誤魔化したりすることなく描く漫画の丁寧さのことで、漫画を読んでいるのにプロレスや格闘技を観ているような感覚を味あわせてくれる。そしてラストシーンがジーンときた。

万人におすすめできる一冊ではないが、格闘技が好きな人、男臭い話が好きな人なら手にとっても損はない、味わい深い佳作だと思う。